前回ご紹介した「同時通訳が頭の中で一瞬でやっている英訳術リプロセシング 」の中から、いくつか翻訳のコツの例をご紹介したいと思います。
まずは「誠にうらやましいかぎりです」というごく単純な日本語を英訳してみてください。
通常日本の英語教育で英語を学んできた典型的日本人は、「うらやましい」という表現に敏感に反応し、すぐに「うらやましい=envy」という構図が頭の中にひらめくことでしょう。
結果的に「I envy you」という英訳になってしまうわけです。学校のテストではこれで問題ないかもしれません。もしくは日本人の下手な英語を理解してくれる外国人に囲まれて、カジュアルな会話の中で使う場合にもそれほど害はないと思われます。しかし、フォーマルな場での通訳としては適切な表現ではありません。
なぜなら、「誠にうらやましいかぎりです」という表現は通常、文字通り(自分と比較して)相手を「うらやむ」というよりも、単純に相手の言ったことに対して、「すばらしいですね」という意味で使われるからです。
したがって、英語をそのまま日本語に直すのではなく、以下の様にまずは日本語を英語らしい表現の日本語に直してから英訳してみます。
誠にうらやましいかぎりです
↓
それは誠にすばらしいですね
↓
That’s really wonderful!
簡単な事のようですが、日本語をそのまま英語に直すことになれた、日本の学校の英語教育で育った人々にしてみると、意外にこれが困難なのです。出る単で覚えた「日本語→英語」の単純な条件反射のマインドコントロールから抜け出すには、かなりの困難を伴うことを覚悟しなくてはなりません。
今回はごく単純な例でしたが、次回以降もう何点かピックアップして、英語通訳のコツをご紹介していきたいと思います。
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